Keyword:高校バスケ トレーナー 会場救護 2日目
この記事の著者
✓理学療法士10年目
✓認定理学療法士【スポーツ理学療法・臨床教育】
✓日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
✓大学病院で勤務
✓スポーツ現場でもトレーナーとして活動
✓臨床ではACL損傷前後のリハビリテーションを中心に実施
会場救護2日目に感じた事を3つまとめていきます。
おそらくためになる話ではなく、感想というか一人一人の物語になりそうです。
時間のある方はどうぞ。
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会場救護をしているトレーナーがどんなことを思っているかを知りたい人
にオススメの記事です。
✅️ねんざをしてしまった2年生の女の子
今日は1日2試合をこなす、ハードな日程です。
こういうときは試合中のトラブルが多い。
早速試合中に捻挫。
高校2年生、試合の第3クォーター。
3年生との最後の試合だからもうちょっと出ていたいという思いが強い。
ただ捻挫直後、立てないし歩けない。
なんなら、泣いており、まともに会話が出来ない状況。
みんなにかつがれコートを後にしたけど、最後の4クォーター目にでたいとのこと。
まずはとりあえず落ち着いてもらう。
返事が出来るか、しっかり深呼吸して、と声をかける。
評価ではまず体重かけれない、腫れがすでに出てきている。
足首を動かすと痛い、状況は最悪です。
さて、これをどうやって試合に復帰出来るようにしていくか。
まずは観察。
見た目には腫れているが、おそらく骨折はなさそう。
なんとか体重もかけれそう。
なのでガチガチにすれば出れるかもしれない。
ただ今後のこと(まだ彼女は2年生)を考えるとどうしたものか、、
頭にこんなことがよぎってきます。
ただこのままガチガチに固定しても無理そうだから、
第3クォーターはアイシングなどをして痛みの緩和をねらい、
その間に足首を動かし、荷重練習をする。
ほんの数分の間だったけど1単位のリハビリをした感じ。
何とか立てて歩ける、ただプレーできるような状況ではなさそう。
あとはコーチに任せますと選手をベンチに戻して試合を見守ることに。
そうすると残り3分くらいで彼女は出てきました。
痛みを我慢してるのはみてわかります。
こんな時トレーナーの気持ちとしては、
「早く試合終われ!」です。
なんとか3分間、コートに立ち続けました。
この3分間が彼女にどういった影響を与えたかは分かりません。
試合後にもう一回見るからきてねと声をかけたものの、
彼女はトレーナーブースに現れることはありませんでした。
こんな時どうすれば良いかいまだにわかりません。
✅️脳震盪を起こした女の子
そのあとまたブースに選手が運ばれます。
頭を抱えて数名に抱え込まれてます。
まずこの状況で思ったのは、スパインボードや担架が会場に準備されていなかったこと。
自分でも正直、確認不足でした。
ブースへ来た状況を聞くに、後頭部を思いっきりコートに叩きつけ、頭の痛さを訴えてます。
おそらく脳震盪だと考えました。
ただ様々なリスクを考え、評価を実施します。
本部の人も駆けつけたため、救急車の手配をしました。
倒れたあと立てない、頭が痛い、これは救急搬送が必要です。
スポーツドクターが前日に来ていたのですが、頭の問題はすぐに救急搬送した方が良いと話していました。
こういった場合はオーバートリアージになっても良いと思ってます。
救急車が車での間、手足の動きや感覚、首の動き、
眼球の動きや瞳孔の確認、気持ち悪さや目がチカチカしないか、確認します。
手足の動きは頭を打って首の骨を損傷していないか、麻痺がないかを見ます。
いわゆる脊髄損傷の確認です。
加えて動きや感覚の左右差を見ます。
これは急性硬膜下血腫や硬膜外血腫の可能性を考えての評価です。
おおよそこの二つに問題がないことを確認できたので、ひとまず安心です。
頭の痛さがずっと続いてる。これは危険だなと思いつつ、救急隊が到着です。
搬送後、その選手は何事もなく、無事に家に帰ったそうです。
チームの監督に脳震盪後の対応をお伝えして、何かあればやはり病院にいくように勧めました。
頭を打って立ち上がれない、頭痛が続くはすぐに病院へ行きましょう。
バスケでも脳震盪はここ数年で多く見るようになりました。
脳震盪の評価としてはSCATが有名ですのでぜひ確認しておいてください。
SCATは医師用のものが多いですので、医療者じゃない方は、
「マドックスの質問」でお調べください。
簡単に評価ができます。
まずは命第一です。
✅️靭帯が切れて望んだ3年生
最後の大会、負けたら終わりこの精神状況では怪我が起きる状況としてはもってこいの状況です。
そりゃあだれだって無茶します。
また高校バスケの会場へ行くと、リハ室でよく見る顔にも出会います。
そんな中、ACL損傷し、保存療法で挑む選手がいました。
病院にもよくきてるので顔見知りです。
初戦ではテーピングをしっかりまいたものの、出場機会には恵まれず、出番はありませんでした。
時間を空けて臨んだ2試合目、優勝候補との試合です。
試合をみていて中々出場することが出来ません。
実力が劣っているわけではありません。
監督も少し考えているのでしょう。
第4クォーターへさしかかった時にベンチから呼ばれました。
彼女のポジションはガード。
無我夢中で走り回ります。
現状では劣勢。ただ一生懸命ボールを追いかけ、果敢にシュートに行きます。
ディフェンスでもその迫力はすごく、何度もカットしました。
出場機会は少なかったものの、終了間際、相手に果敢にドライブをしかけ、
ファールをもらい、フリースローです。
ただその前のドライブからのレイアップ後に、膝をひねっているのを見てしまいました。
痛くて少し間を開けて立ち上がり、涙を浮かべながら、立っている姿があります。
たしかにここまで聞けば美談ではあるかもしれませんが、美談で終わらせてはいけないのがトレーナーです。
ここでも「早く終われー!」と祈りながらプレーを見てました。
確かに満足いくプレーはできなかったかもしれないけど、その足で挑んでいく姿勢は後輩やみている保護者の目に焼き付いてると思います。
彼女になにをできて、何をサポートできたかはわかりません。
ただ、終わった後に感謝を伝えられると、ぎゅっと締められてたものがほどけるような感覚になります。
彼女たちが輝ける瞬間って、本当に少ないかもしれないけど、その場面に立ち会えることって
すごくいい経験だなと改めて思います。
自分の方が青春させてもらってるなーと日々感じます。
✅️まとめ
いかがだったでしょうか。
1日会場にいるだけでいろんな物語が見えてきます。
試合が終わって泣き崩れる選手もいれば、次に向かって切り替えている選手もいる。
彼ら、彼女らは強いなって思います。
そんな中でケガが起きないように、もっと普段の所から関われるような仕組みがあるといいなとつくづく思います。
現在我々が仕組みとして取り組んでいるスクールトレーナー制度も、だいぶステップを踏んで来ました。
形になるまでにはもう少しかかりますが、もう少しお待ちください。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
- ACL損傷をゼロに!!
- 怪我に泣くスポーツ選手をゼロに!!
- 子ども、アスリートの未来をカタチに!!
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