ACL損傷を予防するために⑧〜考え方〜

ACL(前十字靱帯)関連

最後になるかと思います。

このシリーズはまたどこかで全部をまとめて動画なども付け加えようと思います。

最後は臨床で自分がやっていることを少し見せていこうと思います。


治療戦略

これは以前にも掲載しましたが、これらを中心にトレーニングを行っていきます。

メディカルリハでは以前話したように、運動認知や空間認識に重きを置いて実施しています。

また当院では膝装具を用いて制限をつけます。装具で動かしにくい時期に膝をしっかり固定し、股関節や脊柱を動かすことを行っていきます。

この装具がついている期間が3ヶ月間あるのでそのうちに股関節・脊柱の可動性を出していきます。

臨床で悩むのは、今負荷をあげて良いのかということ。

特に外来でリハの頻度が少なくなって来ると同時に、いろんな動作を一気にいろいろ確認したくなります。

そこで訓練における質と量を考え、先ず増やすべきは量です。

回数を増やす、セット数を増やすなどをして量を増やし、その後質を上げます。

ここでいう質は、例えばスクワットとすると、メディシンボールを抱えてスクワットをする、バーベルを担いでスクワットをする、トリプルエクステンションを入れるなど動きや重さを変えることを言います。

また以前受傷機転の所でも話しましたが、足が接地してからKnee inを防ごうとしても間に合いません。

なので予め股関節外旋・外転が作用するようにセラバンドなどのチューブを用いて股関節を意識させながらスクワットさせたりします。

基本的な着地やカッティング時に股関節がしっかり作用しているかどうかは重要です。

これは私の治療コンセプトの根幹になっているといってもよい図です。

要は関節には役割があり、安定性、運動性を重視する関節があるということです。

これを見れば分かるように膝関節は本来スタビリティを発揮しなければいけない関節です。

膝が動きすぎる場面としては股関節や足関節の可動性が低い状態の時。

膝が動きすぎるとどうなるか、察しの通り、靱帯は切れます。

半月板も避ける可能性があります。軟骨を痛めるかもしれません。

ただでさえ膝関節には多く負担がかかっています。

それをもっと大きい関節が役割を担って上げることがケガが少なくなるための一つと考えています。


足関節機能

先ほどのJoint by joint conceptで考えると足関節はしっかり動かなければ行けません。

可動域や筋力を掛け合わせていることが重要ですし、足関節だけでは無く、足部まで目を向けることが大切です。

ACLの損傷時は基本的に地面と接地する瞬間です。

その衝撃を膝で受け止めず、他の関節へ受け流すことが出来ればACL損傷しにくくなりそうになると思いませんか?

この文献では着地時の床反力を取っていますが、③が一番少なかったと報告されています。

要は衝撃を吸収できたということです。

なので大事なのは、しっかりとした底屈動作を獲得することです。

理想は足の甲と脛骨が一直線になるくらいまでしっかりと底屈出来ることです。

これはトリプルエクステンションですが、ジャンプ動作を意識します。これは逆再生すると着地動作になります。

もちろん徒手的に可動域を出すことも重要ですが、動作の中で可動性を造ることが重要になってきます。


膝関節機能

膝はしっかりと安定することが求められます。

手術後筋力はかなり落ちてしまいます。

なので重要なのはまずは筋力です。

これはガイドラインにも推奨されていますので間違いなく必要なことだと感じています。

サイストレッチ

筋力を向上させるためにも効率的に行うにはいわゆる遠心性収縮を利用することが大切です。

このトレーニングは簡単にできてかなりキツいです。

術直後は困難ですが、術後2ヶ月くらい経過すれば出来てきます。

筋力で個人的に重要視しているのはQ/H比です。

ハムの強さを重視します。

もも裏のトレーニング

またハムは強いだけでは無く、早く反応するということを求められます。

脛骨が前方移動することを防ぐためにハムを使っていきます。

ただ単純に収縮させると先ほども言ったように間に合いませんので、伸張反射をうまく利用します。

これはどういうことかというと、骨盤をしっかり前傾させ、ハムにある程度の伸張感を保つことです。


股関節機能

股関節は動的な関節です。

肩関節と一緒でインナーがしっかり効いていなければ股関節も不安定になります。

なのでしっかりと股関節を鍛えます。

チューブを用いて股関節の角度を変えながらいろんなインナーマッスルに刺激を入れていきます。

特に外閉鎖筋と小殿筋は股関節の関節包に直接付着しているという報告からも、この二つの筋肉はとても重要です。


脊柱の機能

背骨のトレーニング②

これは脊柱の可動性確保のためのトレーニングです。

屈曲伸展のみならず重要だと感じるのは胸椎の回旋。

腰痛などある方はとくに腰椎の運動性が高く、胸椎が硬い人が多いです。

膝が動かしにくいこの時期にしっかりと可動性を出しましょう。

また脊柱も椎間関節が複数あり、衝撃を吸収してくれます。

ただカパンディの本にもあるように脊柱の弯曲は3つある事で最大限効果を発揮します。

良い姿勢をしてと指導をすると大概の選手は胸椎も伸展させますが、それは「良い姿勢」ではありません。

良い姿勢とは、背中に一本の棒を立てて首の後ろと腰の後ろに手のひら一本分入る程度を保ちます。後頭部、肩甲骨の間、仙骨が当たっていることも条件になります。

加えて腰椎を安定させる必要があります。

そのときに重要なのは多裂筋です。

多裂筋は体幹を軽度前傾位で働いてきますが、加えて回旋を行うことでさらに筋活動を高めます。

こういった呼吸のトレーニングなどでも腹部周囲はしっかり効いてくるので、意識してやってみても良いと思います。


まとめ

今回は各関節毎にトレーニングを載せてきました。

ただまだまだここには載せきれないほどのトレーニングを行います。

時には厳しくしたりするので、選手からは「部活よりもきつい」と好評です。(笑)

もっと知りたいという方はまた別の所でもまとめる機会を造って作成に当たりますので今しばらくお待ちください。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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