当院では、朝の30分間で抄読会をしています。
抄読会といっても自分の好きなことや知ってもらいたいことを
話す講義形式です。
今回は私の当番だったので痛みについて話をしました。
今回は痛みの中でも評価ツールについて確認を行いました。
・定量的評価

これは学校でも習いますよね。
NRSやVASです。
これは主観的な痛みの量をはかります。
過去の報告でもVASは日本人に向いていないのでは?という報告もみました。
日本人は両サイドが決められると真ん中を選択します。
電車で端と端に人が座っていたら、なんとなく距離を取った真ん中を選んでしまいませんか?
そんな感じです。
ただ研究などで使用するには定量的な数字のVASのほうがやりやすいそうです。
・マクギル疼痛質問表

これは痛みの質を評価するのに長けています。
特に感覚的表現が高い場合、我々理学療法士が出来ることはあまりないように感じます。
その場合は、服薬による薬物療法か、電気刺激などの物理療法が奏功するといわれます。
量のみでは無く質の評価は、予後を知る上で重要になります。
・神経障害性疼痛スクリーニング

これは神経障害性疼痛をスクリーニングできる評価ツールです。
上のマクギルにも共通しますが痛みの質を評価し、治療への一助にするものです。
こうなった場合、薬物での治療や物理療法、慢性痛へ移行しないためのコミュニケーションが必要になると考えています。
・ローランドモリス機能障害質問票(RDQ)

この評価は腰痛の評価においてもっとも国際的に使用されている指標の一つです。
腰痛患者が来た際に、まずこれ!的な感じですね。
これの良いところはSF-36などとの関連性が高い状況にあるということです。
VASとの関連性もあるので量と質の両方をはかれる便利な尺度です。
・PDAS(Pain Disability Assessment Scale)

疼痛生活障害評価尺度になります。
10点をカットオフとし、慢性痛を拾えるツールになっています。
内容が生活に即しており、外来患者などにとても使いやすいツールになっています。
自己分析するためにも重要ですし、問診でいちいち聴いて抜かしてしまうよりも、PDASをとってしまった方が便利だと思います。
・PCS(Pain Catastrophizing Scale)

ここからは精神心理的テストになります。
これは破局的思考を図るスケールで、私臨床でよく使います。
下位項目に反芻→痛みに注意が向きすぎている状態
無力感→痛みに対して自分は何も出来ない状態
拡大視→痛みの強さやそれによって起こりうる問題を現実より大きく見積もる状態
これらを図れます。
反芻は術後急性痛の患者は高く出ます。
慢性痛でやっかいなのは無力感や拡大視が高い事です。
特に無力感は自己効力感との関連もあるため、中々治療しても痛みがとれない事も多々あります。PCSに関しては著明な先生方が様々な論文を出しているのでチェックを。
・TSK(Tampa Scale Kinesiophobia)

運動恐怖感を見ます。
運動することによって起こりうる恐怖感を図るツールになっており、動かす事への運動予期、運動イメージなど図れるツールではないかと理解しています。
運動恐怖感に関しても能力障害やQOLとの関連があるとされていますし、スポーツ障害復帰前の運動恐怖感を図るツールとしても知られています。
運動野スポーツすることに対してどのくらい自信があるか、この辺も確認できます。
・CSI(Central Sensitization Inventry)

中枢性感作を見ます。
昨今では変形性膝関節症の痛みに関しても中枢性感作が影響しているとの論文や報告も多く、全くその通りだなと感じます。
中枢性感作が生じている状態では痛みに関しては治りにくい状態になっているため、個別な対応が必要とされています。
逆に言えばスクリーニングで引っかからなければ、ある程度プロトコルに反った訓練でも効果が出る事が多いと言えます。
・HADS(Hospital Anxiety Depression Scale)

不安やうつを評価します。
基本的に入院中の患者への評価ツールですが、外来患者へも使用して有効性を証明されています。
不安などはSTAIなどもありますが、項目も長く、負担をかけてしまうのでHADSの方が簡便で取れると言えます。
不安やうつ傾向の患者は、自己効力感も低いため、小さな目標をコツコツこなしていくような繊細なアプローチが必要と言えます。
・TIPI-J(Ten Item Personality Inventory:)

パーソナリティをはかります。
Big5の項目を簡便にとれるテストになります。
ただこれを作成した際の被験者が大学生だったことから未成年への信頼性は低いとも言われています。
元々のパーソナリティを簡便に知るためにもとってみるのも良いかと思います。
・まとめ
いろんな評価がありますが、基本的に大事なのはコミュニケーションだと思っています。
この評価をどのタイミングでとるのかなどの工夫が必要ですし、淡々と話ばかりしてもそれはそれで問題です。
加えて慢性痛を見ていく上で、重要だと感じるのは、まずメカニカルストレスが本当にかかっていないか、機能的な問題を見落としていないか、ここに尽きます。
これが分かっていない状況で心理的な要素の評価をしていたら患者は「この痛みは私のメンタルのせい?」となれば完全な負のループです。
問診をしながら、問題点を共有しながら、客観的に分析するためにも痛みの評価は重要です。
私も誰に習ったわけでは無いですが、真摯に患者さんに向き合っていれば「この評価を取るタイミングだ」などわかってきます。
注意して使っていきましょう!
*最後に最初の写真の本はうちの職場のボスの著書になります。
評価も載ってますし、なにより、話し方など具体的に書いてあるので是非読んで下さい!
ペインリハビリテーションを生きて
コメント