新年あけましておめでとうございます。
まつたくです。
今年はなるべくblogをアップしようと思っていたら、
もう1月の半ばにさしかかっていました。
ということで少しずつ、マイペースに進めていこうと思います。
前回合併症について話していましたが、
今回は単独ACL損傷の手術について話をしていこうと思います。

- 手術の方法は?
- 再建靱帯の種類は?
- スポーツ復帰までどのくらい?
💡予防が大事です!!
✅️手術の方法は??
手術の方法としては現在日本のゴールデンスタンダード
となっているのは関節鏡による手術方法です。
これは低侵襲で、患者さんへの負担も少ない手術方法です。
数十年前までは膝に大きな傷を入れて、
膝自体を開き手術をするという方法が主流でした。
しかし、関節鏡の開発によりこの手術はほとんどされなくなりました。
関節鏡の開発者はなんと日本人で、1950年代に日本で開発されています。
関節鏡はそのまま世界の歴史にも残るような発展をしており、
現在では前十字靱帯の手術は関節鏡無くして成り立たないというほどです。
関節鏡は1980年代ごろに普及したとされており、
それまでは関節外再建術といって、人工関節をするように、
膝に大きくメスを入れ、膝自体を開き、
直接見ながら手術するという方法です。
ここまですればスポーツ復帰する上ではダメージがでかすぎます。
なので今は当たり前になっている関節鏡も、
この開発はものすごい外科手術の発展です。
このおかげで前十字靱帯損傷でスポーツを諦める人が減っていきました。
麻酔はどうしている?
この関節鏡を用いるので、部分麻酔で覚醒した(目を覚ました)まま、
手術が可能になっております。
当院では日本でも珍しいかもしれませんが神経ブロック麻酔を用います。
希望をすれば手術を見ることも出来るし、眠っておくことも可能です。
大腿神経と坐骨神経をブロックして手術を行います。
もしくは脊髄麻酔をするケースもあります。
これは2度目の手術になってしまった場合に、
対側から再建靱帯の材料となる半腱様筋腱を採取するときなどに用います。
両側にメスを入れる場合には脊髄麻酔をします。
ただその際には、尿道バルーンを入れられるケースがあるので、
嫌な人からしたら嫌な方法になるかもしれません。
骨孔の開け方は?
手術の際に重要になるのは骨孔の位置です。
骨孔とは、再建靱帯を挿入する際に必要な穴の事で、
骨に穴を空ける作業があります。
骨の穴の開け方にも何種類かあるそうです。
当院で用いているのは経脛骨法という方法です。
簡単に言えば、脛骨側の骨孔から
大腿骨側の骨孔を作ってしまうやり方です。
このやり方では、侵襲が少ないというメリットがあります。
ただ、脛骨側の骨孔の開け方によっては大腿骨側の
骨孔のいい位置を捉えることが出来ないというデメリットもあります。
他にはBR法という方法もあるそうですが実際に診たことはありません。
前十字靱帯の手術では前内側繊維と後外側繊維の2つの骨孔を作成します。
各々が繊維の方向が違うため、違う方向へ骨孔を作成しないといけません。
その方向をしっかり決めようというのがBR法です。
これをする際にはポータルという侵襲場所を、
もう1カ所作成する必要があります。
ポータルは侵襲した後に、滑膜や脂肪体など術野を広げるために
掃除をする場合があります。
このため、STG法においてもAKP(膝前面痛)が出現することがあります。
✅️再建靱帯の種類は?
手術自体は切れてしまった前十字靱帯を、
腱という組織を利用して再建します。
その腱をどこから取るかで手術方法は大きく変わります。
手術の方法は大きく2種類あります。(メジャーなもの)
✓半腱様筋腱・薄筋腱(STG)
これはハムストリングスの腱を利用して手術をします。
これは現在の日本で1番行われている方法といっても良いと思います。
手術の侵襲(傷)が小さく、術後の経過も良好です。
鵞足周辺に傷を作り、半腱様筋腱を採取していきます。
なので脛骨の近位内側は痛みが残りやすいです。
また鵞足付近はちょうど内側から外側へ皮神経が走っています。
なので外側の感覚が麻痺することが度々あります。

当院ではDouble Bundleでの再建術を選択しています。
DoubleかSingleかで議論はありますが、
結果解剖学的に有利なのはDoubleではないかとのこと。
STGのメリットは手術侵襲が少なく、術後早期の回復が早い事です。
またこの後説明するBTBと違い、膝前面痛が出にくいです。
STGを用いるとスポーツ復帰は8ヵ月以降になるとされています。
✓膝蓋腱
もう一つは膝蓋腱を用いた手術法です。
当院でこの手術を選択する際には、
- 体重が重い場合
- 柔道や相撲などの競技をしている場合
- 手術が3回目以降になる場合
など、一定の条件に当てはまる場合に実施されます。

この手術はBTB法(Bone patella tendon born)といわれ、
骨付きの再建靱帯を作成します。
骨孔に骨付き靭帯を挿入するので、骨折が治る過程で修復されます。
なのでBTB法で手術をすると結果的にSTG法よりも
早くスポーツ復帰することが出来ます。
ただし骨付きで採取するので膝前面の痛みは強く、
屈曲制限が出やすいこと、
また膝蓋腱を取っているので伸展筋力の回復が遅くなる
などのデメリットもあります。
✅️スポーツ復帰までどのくらい?
術式や手術する医師の考えによって
スポーツ復帰時期は異なりますが、
ガイドラインや学会などで言われる範囲としては、
「術後6ヶ月〜術後9ヶ月」が妥当だとのことです。
術後9ヵ月以降になれば再受傷率は減ったとの報告もあり、
当院では術後9ヶ月でスポーツ復帰を許可されます。
実際に理学療法を担当していて、6ヶ月では少し、厳しいと感じます。
週に2,3回通うことが出来れば可能であるとは思いますが。
当院ではプロコトルを定めています。

基本的にはこれに沿ってリハビリテーションを進めていきます。
当院の復帰基準としてはCybexという筋力測定器で
患健側比8割以上(基本は左右差なし)と
アジリティテストで30秒以内としています。
この動画の最初のアジリティテストを30秒以内としていますが、
個人的には25秒、もしくは20秒前後を目指すように進めます。
基本的にはスポーツ復帰する際には、ケガをする前の
パフォーマンスより良くなって復帰することを目指します。
加えて身体的評価のみではなく、最近では心理的評価を
きちんと評価して、復帰するようにしています。

この評価において計算式がありますが、
計算して70%以上になることを目指します。
心理的にも復帰する準備が出来ていることを示します。
これらをきちんと評価して復帰を総合的に判断していきます。
✅️まとめ
ACL術後のみではないですが、整形外科術後の理学療法において
術式の理解は重要だと考えます。
手術方法は手術する医師によって若干癖があったり、
方法が若干変化したりするのでその辺りも含め、
医師との連携(交流というべきか)をしっかり取ることが大事です。
そういった点でも理学療法士やトレーナーの
コミュニケーション能力って大切だなーと日々感じます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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