アスリートの競技復帰を考える上で重要な視点〜半月板損傷からの競技復帰〜

ACL(前十字靱帯)関連

こんにちは。まつたくです。

今回は半月板損傷についてお話しします。

半月板損傷をしてしまった場合に何をしたら良いの?

当事者としては?

サポートしているトレーナーとしては?

今回はトレーナーの視点で情報提供していきます。

目次はこんな感じです。


  • 半月板損傷を疑う受傷機転
  • 半月板損傷のスペシャルテスト
  • 半月板損傷の治療
  • 治療後のリハビリポイント

💡ざっくり半月板についてしろう👍


✅️半月板損傷を疑う受傷機転

半月板損傷には大きく2種類あります。

円板状半月によるものとスポーツによる外傷の2つがあります。

前者の円板状半月(Discoid)は、

生まれ持って半月板の形が正常な半月板と異なっており、

通常の日常生活においてもメカニカルストレスをうけ、

痛みが出現する場合が多いです。

この場合は主に小学生から中学生の時点で痛みを伴うことが多く、

日常生活レベルの運動で痛みを感じます。

ロッキングや膝折れなども生じ、ADLに支障をきたします。

後者のスポーツ外傷によるものはスポーツ中の受傷が多く、

急激に痛みが出てくる高エネルギー外傷で起こる場合と、

だんだん痛くなる慢性発症があります。

文献的には急激に痛みが出た場合は外側の半月板に多く、

慢性発症においては内側の半月板に多いとのデータもあります。

どちらにしても

「膝をひねった」「ピンと伸ばした」「ぐっと急激に曲がった」など

基本的に体重をかけた足に何かが起こったときに半月板は損傷します。

半月板が損傷すると、

「伸びたまま戻らない」「引っかかる感じがある」「体重をかけると痛い」など

の症状が見られます。また膝折れも生じる方もいるので注意が必要です。


✅️半月板損傷を疑おう(半月板損傷のスペシャルテスト)

半減損傷を疑った場合に確認すべき検査として

「マックマレーテスト」「アプレーテスト」「Thessaly test」

などがあります。

特に「Thessary test」は簡便にテストでき、

感度、特異度ともに高い研究報告が出ていますので必見です。

マックマレーテストは下腿の内外旋方向や、

屈伸の角度の組み合わせで損傷部位が内側なのか外側なのか、

前後節なのか前後角なのかをある程度判断することが出来ます。

ただ最終的な判断はMRIなどの画像所見で確認されますが、

医師から聞くとMRI自体も本当に損傷が有るのかどうかは分からないそうです。

結局は関節鏡で確認するしかないとの話も聞きました。

ただ膝に痛みを抱えており、症状が改善しない場合は病院へ行きましょう。


✅️半月板の治療(保存と手術)

半月板損傷がおきたら、まずは整形外科へ受診をしましょう。

整形外科を受診し、手術か手術せずに治療するかを選択しなければいけません。

手術を選択すればスポーツへの復帰は5、6ヶ月程度かかります。

手術をしなければ復帰は早くできるかもしれませんが、

爆弾を抱えているのと一緒なのであまりおすすめは出来ません。

トレーナーや理学療法士の腕にかかっていると言えると思います。

保存療法を選択すればリハビリが治療になります。

基本的にはまずは評価です。

なぜ膝にケガを抱えてしまったのかを確認していき、

基礎となる筋力・可動域の回復を狙って筋トレや可動域訓練をします。

個人的には脊柱や股関節のモビリティが足りない選手が多い印象があり、

そこは重点的にトレーニングしていきます。


✅️治療後のリハビリポイント

先ほど話しましたが、脊柱や股関節のモビリティ改善を最優先にします。

また膝の安定性を高めるために

筋トレやマルアライメントを改善する必要があります。

そうなった際には足部なども細かく見ていかないといけないですし、

もちろん競技特性やその競技のポジションなども踏まえて

その選手の癖やプレースタイルを聴くことが重要です。

チェックするポイントは、まずは

①膝機能(アライメント・可動域・筋力・感覚など)

②脊柱・股関節のモビリティチェック

③ダイナミックアライメント

④全身的なスタビライズ能力

これらを動きの中で評価しながら出来ない部分と出来る部分を

評価して、長所をとことん伸ばしていきます。

もちろんケガに陥る可能性のある短所も、可能な限り改善する

必要があります。


✅️まとめ

今回は下記の文献を参考にしました。

☆半月板手術後のアスリートの競技復帰

(福田秀明:臨床スポーツ医学Vol.36 No8 2019-8)

その中に有用な情報もあったため引用しておきます。


【福田秀明:2019】

○ACL損傷に合併 ⇒外側半月板後節、内側半月板中節

    単独損傷 ⇒外側半月板中節

 繰り返しの外力 ⇒内側半月板中後節

○術翌日より全荷重、ROM、四頭筋訓練、疼痛なく

歩行可能であれば早期よりCKCexを許可しており、

術後4-6週で疼痛や水腫がなければランニング開始としている

○大腿四頭筋と殿筋の筋力が重要

○縫合術後、2週間Knee brace固定、非荷重とし、

術後3週目から1/4荷重歩行開始、

その後1週おきに1/4部分荷重ずつ上げていき、

術後6週で全荷重としている。

○術後3-4か月目でジョギング、術後5-6か月以降で運動許可をする


【Ahn JH et al:2008】【Arnoezky SP et al:1988】【Henning CE et al:1990】【土屋明弘:2014】

○半月板縫合術に関しては、変性断裂ではなく

外傷性の半月板外縁部(red-red zone)の縦断裂が

良い手術適応であるが、近年では編成所見を伴う症例や水平断裂、

円盤状半月板などの治癒率が従来低いとされてきた無血行野での損傷も、

marrow stimulatingやfibrin clot、滑膜移植などのaugmentationを併用し、

半月板機能を可能な限り温存するために積極的に縫合術を施行している。


【Salata MJ et al:2010】

○半月板切除の予後不良因子として、

全切除・変性断裂・肥満・ACL損傷・外側半月板切除などあり

○スポーツ復帰後の痛みや関節水腫が内側半月板症例より外側の方が多い


【Osti L et al:1994】

○単独縦断裂症例で術後平均41日、

複合断裂例で平均64日、軟骨損傷合併例では術後78日で

スポーツ復帰可能であったと報告しており、

全体では55日で98%の患者がスポーツ復帰可能であった


【土屋明弘:2011】

○スポーツ復帰時期は内側半月板で術後8-10週以降、

外側半月板で術後10-12週以降を目標としているが、

筋力回復が遅い例や関節腫脹・疼痛を伴う場合はその都度運動制限をしている


【半月板の手術紹介】

内側半月板 ⇒inside-out法

外側半月板 ⇒all-inside法


marrow stimulating(marrow venting procedures)

【McNulty AL et al:2009】【Howarth WR et al:2016】

ACL再建と同時に行った半月板修復の成績は、

骨孔をdrillingした際の骨髄からの血液によるbiologicalな

環境により単独での修復よりも治癒が良いとの報告がある。


・fibrin clot

【福田秀明:2019】

組織修復誘導作用がある血小板由来の

growth factorやfibronetinを含んでおり、

自家末梢静脈血から採取し簡便に作成出来、

断裂部に補填しやすい生物学的治癒促進方法の一つ


・synovial flap(滑膜移植)

【福田秀明:2019】

・治癒している縫合部跡には、

滑膜被覆や滑膜増生が認められるため、

有茎または遊離滑膜移植を治癒促進材料として使用することもある


・PRP(platelet rich plasma)

多血小板血漿と訳され、血小板を濃縮した血漿である

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